NNR-MORVEL56 / Slab2 / GNSS + GNSS-A / 56 plates

岩盤は計算できる。
地震の日付は計算できない。

地表を覆う56枚のプレートは、球の中心を貫く軸まわりの剛体回転として、 ミリ単位で記述できます。ここではその運動を実データで再現し、 たまるひずみを積算し、そこから何がどこまで言えるのかを検証しました。 結論を先に言うと——速度と確率は出せます。日付は誰にも出せません。

これは防災情報ではありません。 本ページは公開データを使った事後分析と手法の検証記録であり、 将来の地震を予測するものではありません。地震・津波の防災情報は 気象庁の発表に従ってください。 掲載している確率は、地震調査研究推進本部が公表している値を手法検証のために 再現したものか、過去データに対する事後検証の結果です。
English abstract

A single validated pipeline is applied uniformly to nine subduction margins: rigid-plate kinematics from NNR-MORVEL56, interface geometry from Slab2, elastic dislocations from Okada (1985), and surface velocities from the Nevada Geodetic Laboratory's MIDAS field plus the Japan Coast Guard's GNSS-Acoustic array. Every component is checked against an independent published result before use: per-plate RMS velocities reproduce Argus et al. (2011) to 0.32 mm/yr across 53 plates; a layered propagator-matrix solver reduces to Okada in the homogeneous limit to 2e-4; a Brownian Passage Time model reproduces Japan's published Nankai 30-year probability.

Three results are not reproductions of published work. (1) Seafloor GNSS-A breaks the afterslip / viscoelastic ambiguity that land geodesy cannot: above the 2011 Tohoku rupture the seafloor moves landward at 60 mm/yr while the coast moves seaward, a sign reversal deep afterslip cannot produce, and including mantle relaxation cuts the seafloor misfit from 20.9 to 14.5 mm/yr. (2) A model-resolution survey of candidate instrument sites identifies where the next seafloor station buys the most: 30.8N 132.4E for Nankai, 40.7N 144.3E for the Japan Trench, worth 23x and 116x ten new coastal land stations respectively. (3) Across margins, shallow resolution correlates with proximity of instruments to the trench (r = -0.72 with slab depth beneath the nearest sites) far better than with land station count -- Nankai and Cascadia have 768 and 667 land stations and 52% versus 21% shallow resolution, the difference being nineteen seafloor sites. Pruning shows the Japan Trench shallow constraint rests on six seafloor sites: 18 of 194 stations retain 95% of it.

Stated limits: the viscoelastic solver is plane strain; the coupling inversion uses homogeneous Okada Green's functions with a layered correction measured at 5%; systematic error is dominated by rigidity (0.15 in magnitude) rather than by data noise (0.02). Coupling figures are quoted only at the ~200 km along-strike scale that checkerboard tests show is resolved. Source, data and every validation script are described below.

Corrections, and especially a pointer to prior work on the cross-margin relation, are welcome: boss@allfesta.com

1. プレート運動のシミュレーション

地図をクリックすると、その地点が乗っているプレートと速度が出ます。 基準プレートを切り替えてみてください。速度は絶対量ではなく 「何に対して」動いているかで決まる——プレート運動論の核心が、色の塗り替わりで見えます。

地点 日本列島付近をクリック
プレート
速さ
方位
0
100 mm/yr

色は基準プレートに対する速さ。矢印は向きと大きさ。 オイラー極(回転軸)そのものは速度ゼロの点なので、基準を変えると どこかに必ず「静止した渦の中心」が現れます。

2. これは本物か——公表値との突き合わせ

もっともらしい絵は誰でも描けます。信用に足るかは、独立に公表されている数字を 再現できるかで決まります。4つの検査を通しました。

scripts/validate.py の出力
検査内容結果判定
プレート面積 球面ポリゴン積分 vs 論文の公表面積 最大誤差 0.00008 sr PASS
プレート別RMS速度 Argus et al. (2011) Table 1 の56プレート全部 最大差 0.32 mm/yr PASS
NNR閉合条件 全リソスフェアの角運動量の総和がゼロか(物理条件) 残差 0.01 % PASS
境界での収束速度 実在12境界の速度が文献値の範囲に入るか 12 / 12 PASS

2番目が本命です。RMS速度は、オイラー極の代数・プレート形状・等面積サンプリングの 3つが同時に正しくないと合いません。53プレートで 0.32 mm/yr 以内。 残り3枚は自分のオイラー極が自分の内部にあるプレートで、 極では速度ゼロ・端では最大となるためRMSが形状に過敏になり、比較の意味が薄くなります (うち2枚は除外せずとも 0.1 mm/yr で一致)。

3. 日本周辺——沈み込み速度とたまったひずみ

収束速度はシミュレーションの出力です(仮定ではありません)。 固着率と断層面積は文献からの入力で、ここが不確かさの主な出どころになります。

収束速度の分解 — 2026年時点
セグメント収束横ずれ 斜交角ひずみ蓄積
日本海溝(宮城沖)92.5+1.855.5
千島海溝(根室沖)77.0−47.832°46.2
南海トラフ48.9−32.534°34.2
駿河トラフ(東海)53.8+0.437.7
相模トラフ(関東)9.6−46.678°6.7
琉球海溝(沖縄沖)106.3−25.413°21.3

単位 mm/yr。ひずみ蓄積 = 固着率 × 収束速度。

モーメント収支 — 前回の地震からの蓄積
セグメント前回からすべり欠損 相当MwM8.0相当まで
南海トラフ(1946)81 年2.8 m8.5811 年
駿河トラフ(1854)173 年6.5 m8.2670 年
千島・根室沖(1973)54 年2.5 m8.1828 年
相模トラフ(1923)104 年0.7 m7.53517 年
日本海溝・宮城沖(2011)16 年0.9 m8.296 年

「相当Mw」はこれまでにたまった分を全部出したら何Mかであって、 次に起きる地震の大きさでも、期日でもありません。銀行残高であって請求書ではない。 2011年の東北地方太平洋沖は、当時のセグメント収支の合計を大きく超える量を、 M9が想定されていなかった場所で解放しました。

相模トラフの収束が 9.6 mm/yr と小さく出ているのは、剛体プレートモデルの限界です。 伊豆の衝突帯は3次元的で、56枚の剛体近似では表現しきれません。 宮城沖の 92.5 mm/yr も、オホーツクプレートの角速度自体が ±22% の不確かさを持つため上振れ寄りの値です(北米プレート基準なら 83 mm/yr)。

4. 予測——当たる部分と、当たらない部分

余震の「回数」は予測できます。本震の「日付」は予測できません。 この差は好みの問題ではなく、事後検証で分かれます。

擬似予測テスト:本震後3日だけを見て、次の30日を当てる

scripts/backtest.py — 予測対象期間のデータは一切見せていない
本震p値b値 対象M予測実際判定
2011 東北地方太平洋沖1.431.306.41.14外れ
1994 北海道東方沖1.801.005.62.15的中
2016 熊本1.610.684.53.17的中
2004 新潟県中越1.000.694.59.511的中
2008 岩手・宮城内陸0.991.084.59.11外れ
2024 能登半島1.061.064.86.95的中

各本震について上位2つのマグニチュード閾値で採点し、全12予測中10が ポアソン95%区間に収まりました。合計では予測36件に対し実測37件(比 1.03)。 個々に外れるのは想定内で、東北の過小予測は「余震がさらに余震を生む」効果—— ETASモデルが扱い、単一の大森公式が扱わない部分です。

長期確率:更新過程モデル(BPT)

セグメント経過平均間隔 ばらつき α30年確率ポアソン比較
南海トラフ M8–981 年88 年0.2476 %29 %
根室沖 M7.8–8.554 年72 年0.5055 %34 %
相模トラフ M7.9104 年220 年0.5014 %13 %

南海トラフの 76% は、地震調査研究推進本部が公表している「30年以内70〜80%」を 再現しています。これは手法が正しいことの確認であって、 独立した新しい推定ではありません。他の2つは汎用のばらつき係数を使っており、 有効数字は1桁と考えるべきです。α を 0.20〜0.30 で振るだけで南海は 68〜83% に動きます。

5. 固着率を「仮定」から「実測」に

ここまでの収支計算で唯一の仮定が固着率でした。GNSS の実測速度と剛体回転の差 ——つまり弾性的にたわんでいる分——から、それ自体を推定します。 データは MIDAS 速度場(GEONET を含む日本周辺 1,621 局、中央値 15.7 年、誤差 0.42 mm/yr)と Slab2 の沈み込み面形状。

考え方は Savage (1983) のバックスリップ分解。プレートが常に滑っていれば 上盤に弾性ひずみは溜まらず、地面はただ平行移動します。地震の合間に GNSS が 見ているのは溜まらなかった分=すべり欠損。それを沈み込み面上の 逆向きすべりとして弾性半空間で解くと、内陸へ減衰する陸向きの変位が出ます。 剛体回転と固着率は同時に解きます——弾性変形は観測網より内陸まで 届くので「絶対に動かない遠方の局」は存在せず、回転を先に決めると 弾性信号の一部が座標系に吸収されて固着率が低く出るからです。

南海トラフ — 709局、RMS 5.24 mm/yr、分散減少率 77%

深さ方向の固着率
深さ固着率
5-15 km0.61
15-25 km0.63
25-35 km0.51
35-45 km0.37

浅部が固着し深部で解放される、期待どおりの形。

走向方向の固着率(南西の九州から北東の駿河湾へ)
位置固着率
30.68N 131.50E0.00
31.04N 131.78E0.00
31.54N 132.06E0.20
32.09N 132.40E0.77
32.56N 132.83E1.00
32.94N 133.31E1.00
33.34N 133.86E0.85
33.60N 134.53E0.62
33.70N 135.22E0.50
33.74N 135.88E0.49
33.92N 136.48E0.47
34.15N 136.95E0.47
34.50N 137.31E0.55
34.95N 137.65E0.51
35.16N 138.29E0.46
35.18N 138.95E0.81

訂正(後日のチェッカーボード試験による)。この16行の表は細かすぎました。 60km スケール(=表の1行)の構造は振幅の20%しか復元できていません (相関0.49)。分解できているのは約200km以上のスケールで、日向灘と四国沖の対比は そこに乗るので結論は生き残りますが、1行ごとの数値を引用してはいけません。 深さ方向も振幅が5〜50%しか戻らないので、報告している 0.61/0.63/0.51/0.37 という 変化は平滑化で平均に引き寄せられており、実際のコントラストはもっと強い はずです。詳細は第10節。

日向灘はほぼゼロ、四国沖は 0.85〜1.00。 公表研究の「日向灘は固着が弱くスロースリップ卓越、四国沖は強固着」という分節構造を、 こちらのデータだけで独立に再現しています。平滑化パラメータを 10 / 30 / 60 と振っても 平均は 0.53 / 0.53 / 0.55 で動きません。

日本海溝は「できない」ことが分かった

これが今回いちばん確かな知見かもしれません。東北日本の平均速度は +30.9 mm/yr の東向き。固着による地震間の変形なら 西向きでなければならず、符号が逆です。 2011年の余効変動が完全に支配していて、この期間の GNSS をいくら精密に逆解析しても 出てくるのは「固着率のラベルを貼った余効緩和の形」でしかありません。 スクリプトはこのゾーンの数値も出しますが、推定値ではなく失敗の実例としてです。

何が変わったか

南海トラフの蓄積モーメント固着率相当Mw
仮定(一様)0.708.89
GNSS実測(空間変化あり)0.538.81

マグニチュードはほとんど動きません。固着率が 25% ずれても Mw では 0.07。 測定の価値は数字ではなく空間分布のほうにあります。一様 0.70 は欠損を 全体に均しますが、実測は「ほぼ全部が四国沖の下、日向灘にはほぼ無い」と言っている。 どこに溜まっているかは、どのセグメントが割れうるか、そこで始まった破壊がどこまで走るかを 左右します。

6. 日本海溝——粘弾性余効変動を入れて解く

前節で「震災後のGNSSでは原理的に不可」と結論した穴を埋めます。 データを1局1速度から日次時系列に切り替え、東北の前弧147局に 軌道モデル(定常+ステップ+年周+過渡項)を当てはめました。

曲線当てはめでは取り切れない

同一局 J028(岩手県 39.57N 141.94E)
推定方法東 mm/yr北 mm/yr
震災前の定常速度(真値)−6.2−8.4
震災後・直線当てはめ+55.4−23.7
震災後・過渡項3つつき+10.4−10.4

対数項1つと指数項2つ(時定数1.2年・12年)を入れても +16.6 mm/yr の東向きバイアスが残ります。緩和時定数が観測期間と 同程度だと、その項は窓の中でほぼ直線になり定常項と共線になる。当てはめは信号を どちらか一方に割り振れず、ノイズの都合で分配してしまう。 時定数の選び方の問題ではなく構造的な縮退です。

粘弾性の厳密解

Okada の表面変位は弾性定数のうち f = μ/(λ+μ) だけに依存し、 しかも線形です(u(f) = u(0) + f·[u(1)−u(0)])。マクスウェル体に対応原理を 適用すると μ̄(s) = μ₀s/(s+1/τ)、K は一定なので f(s) = μ̄/(K+μ̄/3)。 ステップすべりに対する応答 f(s)/s の逆変換は指数関数1本: f(t) = ½·exp(−t/1.2τ)。t→∞ で f→0、つまり非圧縮に緩和します。 均質マクスウェル半無限体の時間変化は、指数1本 × 事前計算した変位差1枚だけ。 プロパゲータ行列もハンケル変換も要りません。

粘性率は速度場からは決まらない

このレオロジーでは空間パターンが時定数に依りません。時間はスカラー倍 するだけ。実際、粘性率を1年〜256年で振っても空間当てはめの残差は 4.16 mm/yr で 完全に不動でした。振幅が自由なら、2桁違う粘性率が同一の地図を予測してしまう。 だから粘性率は時間領域からしか取れません。日次時系列で走査すると τ = 8年 → 有効粘性率 1.0×1019 Pa·s。 NE日本の上部マントルの公表値域(1018〜1020)の中央です。 ただし谷は浅く(差4%)、有効数字は1桁と考えるべきです。

3つの方法を突き合わせる

震災前データが「正解」として存在するので、震災後データの補正が正しいかを判定できます。

方法平均固着率真値との差 RMS分散減少率
A. 震災前速度(正解)0.52 2.7280%
B. 震災後・曲線当てはめのみ0.47 −0.057.5930%
C. 震災後・粘弾性+余効すべりで補正0.62 +0.104.1164%

深さ方向(A)は 0.55 / 0.53 / 0.51 / 0.51。公表の震災前逆解析「宮城沖 0.5〜1.0」の 下端に一致します。陸上GNSSは海溝から100〜250km離れており浅部の分解能が低いので、 低めに出るのは当然です。

Bの平均値が近いのは偶然。余効変動の一様成分は同時推定した剛体回転が 吸収するので平均だけは合ってしまう。しかし RMS は2.8倍悪く、深さ分布も平坦に潰れています。 数字が合って見えても中身は別物、という良い例。

Cは当てはめを大きく改善するが、正解は再現しない。 RMS 7.59→4.11、分散減少率 30→64% と補正が実在の信号を捉えているのは確かですが、 平均固着率は +0.10 過大で、パッチごとの相関はわずか +0.34。 空間的な細部は回復していません。

日本海溝の答えは A(震災前データ)です。粘弾性補正は誠実に効きますが、 震災前データの代わりにはならない。そしてこの判定ができたのは、正解が手元にあったから にすぎません。震災前の測地データが無い沈み込み帯に同じ手続きを適用したら、 誰も反証できない数字が出てきます。それが今回いちばん重要な結論です。

7. 弾性層+粘弾性半無限体——伝播行列

前節の均質マクスウェル半無限体には弾性リソスフェアの蓋がなく、当てはめが要求した 振幅は予測の 0.29 倍でした(=予測が3倍以上強すぎた)。蓋を入れるには層構造を 解くしかありません。海溝直交断面の平面ひずみで、波数ごとに解きます。

x 方向にフーリエ変換すると弾性静力学が深さ方向の常微分方程式系になります。 状態ベクトル y = (u_x, u_z, σ_xz, σ_zz) に対し dy/dz = A(k)y。 固有値は ±k が各重複度2(ジョルダン束)なので、基底解は e−kz と z·e−kz。転位は震源深さでの状態ベクトルの跳びとして入り、 水平断層・単位すべりなら「変位がすべり量だけ跳び、応力は連続」に帰着します—— 手で検算できる極限があるのが有り難いところです。

検証:均質にすれば Okada に一致しなければならない

層と半無限体を同一物性にした場合の Okada との差
断層形状水平(正規化RMS差)鉛直
浅い逆断層 dip 12°, 5–45 km0.00130.0051
dip 30°, 10–40 km0.00020.0002
深部 dip 20°, 30–60 km0.00020.0001

ピーク値も −0.5378 vs −0.5380 のように4桁一致します。伝播行列コードは Okada を知らないので、震源表現・ジョルダン基底・10×10の境界系・逆フーリエ変換の どれが間違っていても一致しません。

潰した3つの罠

1. 単位系。k と z を km、μ を Pa にすると行列成分が19桁にわたり、 条件数 1016〜1022null_space が重複度2の固有値に対して 3次元の零空間を返しました(以降の基底は全部ノイズ)。無次元化で 条件数 102〜106 に。転位の変位は絶対的な硬さに依らないので答えは不変。

2. 増大指数のオーバーフロー。層厚50kmを4km格子が分解する波数で ekz を伝播させると倍精度が壊れます。各領域に固有の基準深さを持たせ、 すべての指数を e−k·(正の距離) の形に正規化しました。

3. Okada との対応づけ。Okada は断層の深い縁が y=0、 こちらは浅い縁が x=0。したがって 約186kmのオフセットがあり、 単なる反転ではありません。加えて軸が逆向き、鉛直の正負も逆。

粘弾性化と、その有効範囲

半無限体を μ̄₂(s) = μ₂s/(s+1/τ) に置き換えて同じソルバを回し、Gaver-Stehfest で 逆ラプラス変換します。Stehfest は実数の s しか要らないので ソルバは無改造で済みます。有効範囲は仮定せず実測しました——項数 6/8/10/12/14 を 相互比較すると t/τ ≤ 3 で4桁一致、5 まで1%、6 以上で互いに発散。 節点が変換の平坦部に落ち、大きな重みの交代和が丸め誤差を差し引くだけになるためです。

そして、弾性リソスフェア厚は決まりませんでした

モデル形状の相互相関(観測範囲 163–435 km 内陸)
厚さ254060 90130200 km
25 km1.00−0.26−0.58−0.45−0.59−0.80
40 km−0.261.000.820.910.880.74
60 km−0.580.821.000.980.980.95
90 km−0.450.910.981.000.980.89
130 km−0.590.880.980.981.000.96
200 km−0.800.740.950.890.961.00

60 km 以上のモデルは相互相関 0.98 =観測範囲では同じ形で、 原理的に区別できません。6モデル中4つが負の振幅を要求し (マントルが逆走することになる)、誤差は全範囲で 26% しか動きません。

原因は観測点の位置です。厚さを弁別できるのは海溝から約150km以内ですが、 最も近い観測点が163km内陸で、その手前は海。 陸上測地だけでは決着しません。海底圧力計・GPS音響測距が要ります。

負の結果ですが、なぜ決まらないかが特定できているのは意味があります。 「もっと良いモデルを」ではなく「観測点をどこに置くか」の問題だと分かるからです。

8. 海底測地データを入れる

ここまでの推定は全部、陸上GNSSだけで作っていました。日本の観測点は全て海溝から 100km以上内陸なので、震源域の浅い側——津波を出す側、1944/1946に割れた側——は 外挿でしかありません。海上保安庁の GNSS-A アレイはちょうどそこに乗っています。 そして無料で、登録も要らず、直リンクで落ちてきました(CC BY-NC 4.0、27点)。

地震時変位が Okada の検証になった

2011年 東北地方太平洋沖の海底地震時変位(陸上は最大5m程度)
地点一様すべりモデル実測 方位差
MYGI(海溝から94km)9.86 m22.17 m0.4112°
KAMS(59km)9.95 m21.08 m0.4510°
FUKU(177km)8.64 m4.37 m1.91

方位は全点12°以内(実装の向きと物理は正しい)ですが、海溝寄りで振幅が2倍過小。 実際のすべりが浅部に集中していたことの直接証拠で、 陸上データからは見えなかったものです。

震災後の海底は陸と逆向きに動いています。MYGI −59.7、KAMS −60.2 mm/yr で西向き、同時期の陸上は東向き。これは Sun et al. (2014, Nature) が粘弾性緩和の 証拠として報告した現象そのもので、余効すべりだけなら海側も東向きになります。 この符号反転が、前節で分離できなかった粘弾性と余効すべりを分ける鍵です。

南海:陸上のみのモデルは海底を外す

海底19点を逆解析に入れずに、陸上のみのモデルで予測して採点しました。

評価RMS
陸上モデルの、自分のデータへの当てはめ5.2 mm/yr
同じモデルの、海底での予測誤差13.5 mm/yr

TOK1(観測 −12.6 / 予測 +4.0)、TOK2(−11.2 / +8.4)では符号すら 合っていません。浅部の固着率は、陸上のみの当てはめが示唆するほど決まって いませんでした。

効いたのは新データより「重みの是正」だった

海底を加えても、最初は固着率が全く動きませんでした(0.53→0.53)。原因は重みづけです。 MIDAS の形式誤差は 0.38 mm/yr ですが、モデルは実際には 5.24 mm/yr で しか合わない。つまり陸上データが実現可能な精度の14倍精密であるかのように 重みづけされ、709局が19点を溺れさせていました。分散成分推定(各データセットの χ²/n が 1になるようσを再スケール)で是正すると、陸上 0.38→3.5、海底 2.7→2.3 mm/yr。

モデル平均浅部 5-15kmRMS
陸上のみ0.530.605.25
陸上+海底0.520.645.28
+座標系オフセット自由0.510.585.29

深さ方向: 5-15km +0.04、15-25km −0.02、25-35km −0.02、 35-45km −0.03。平滑化を1〜10で振っても浅部は +0.036〜+0.065 で符号が 一貫します。海底データは「固着はもっと浅い(沖の)側にある」と言っている—— 本来あるべき場所で、かつ津波にとって効く場所です。

変化幅が小さいのは単純な算数です(19点 vs 768局)。海底が変えたのは 答えより確度のほうでした。そして今回いちばん効いたレバーは新データではなく、 重みの是正だった。MIDAS の形式誤差を額面どおり受け取っていたことの ほうが、海底観測網1つ分より浅部固着率を動かしています。

9. 日本海溝——粘弾性と余効すべりを分離する

第6節で「粘弾性補正は震災前データの代わりにならない(パッチ相関 +0.34)」で止まっていた 問題です。大地震のあと地面を動かすものは2つ——余効すべりとマントルの粘弾性緩和——ですが、 陸上では両方とも海溝向きで見分けがつきません。海底では違います。 破壊域の真上では、余効すべりは海側へ引き、マントル流動は陸側へ引き戻す

実測した余効変動(震災後 − 震災前)
地点海溝からの距離東成分 mm/yr
KAMN48 km−6.5
KAMS59 km−25.8
MYGI94 km−35.0
MYGW136 km+19.7
FUKU177 km+33.9
陸上平均296 km+7.7

前言を1つ訂正します。「余効すべりでは陸向きは作れない」は言い過ぎでした。 深部(破壊域の下側)ではそのとおりですが、浅部(海溝側)のすべりなら、その下端より 陸側の点を引き戻せます。なので判別は二択ではなく「必要になる浅部すべりが 信じられる量か」という問いになります。実際に許すと当てはめは少し良くなりますが、 2011年に約50m滑った面に、さらに 210 mm/yr のすべりを要求します。

地震時すべりを海底データで較正した

緩和は「地震が残した応力」で駆動されるので、震源モデルの誤りをそのまま引き継ぎます。 一様矩形1枚は海溝寄りの地震時変位を2.4倍過小に出す(MYGI 9.86 vs 22.17 m)= 海底サイトの真下でマントルを過小にしか駆動していない。海底6点の地震時変位に 3つの深さ帯のすべりを当てはめました。

深さ方向すべり
5–65 km34.3 m
65–130 km23.4 m
130–200 km0.0 m

浅部集中——実際の東北地震のとおりです。残差 5.33 m(観測は1〜22 m)。

結果

モデル陸上 RMS海底 RMS
深部余効すべりのみ6.220.9
深部余効すべり+粘弾性緩和7.214.5
深部+浅部余効すべり5.620.3

海底の信号自体が 26.4 mm/yr rms なので、深部余効すべりだけでは海底をほぼ何も 説明していない(20.9 が残る)のに陸上はきちんと合います。緩和を足すと 14.5 まで 下がる(1.44倍改善)。

そして弾性層厚が動いた

層厚海底 RMS振幅 mm/yr
30 km17.42.1
45 km13.111.3
70 km12.113.5
110 km13.910.7

最悪/最良比 1.44、振幅は全て正。陸上のみでやったとき(第7節)は 比 1.26 で、6モデル中4つが負の振幅を要求=弁別ゼロでした。 海底6点が、陸上400局超のネットワークにできなかったことをしています。

NE日本の弾性厚の公表値は概ね30〜80kmなので70km最小は妥当な範囲ですが、 6点・単一レオロジーなので示唆であって測定ではありません

10. 分解能試験——どこまでが測定で、どこからが正則化か

公表される固着率の逆解析には必ずこれが付いています。この企画には無いままでした。 そして無いのは形式の不備ではなく、実質的な欠陥です。減衰最小二乗は何を食わせても絵を返し、 データが見えていない部分は平滑化演算子が埋めます。 既知のパターンを面に置き、実際の観測点配置で順計算し、現実的なノイズを乗せ、 同じ手続きで逆解析して、何が戻るかを見ました。

チェッカーボード復元(浅部 5-15km、相関 / 振幅保持率)
走向方向のスケール陸上のみ陸上+海底
60 km(=パッチ1枚)0.49 / 0.200.73 / 0.42
120 km0.75 / 0.510.96 / 0.80
180 km0.91 / 0.740.90 / 0.72

第5節で16行に分けて出した走向方向の表は、細かすぎました。 60km スケールの構造は振幅の20%しか復元できていません。分解できているのは 約200km以上で、日向灘と四国沖の対比はそこに乗るので結論は生き残りますが、 1行ごとの数値を引用してはいけません。

深さ方向はさらに弱く、振幅が5〜50%しか戻りません。 陸上の観測点はどれも面全体を広く滑らかな核で見ているので、5-15km と 15-25km を 分けろという要求にデータがほとんど答えられない。つまり報告した 0.61 / 0.63 / 0.51 / 0.37 という深さ変化は平滑化で平均に引き寄せられており、 実際のコントラストはもっと強いはずです。あの数値は下限と読むべきでした。

海底を足すと120kmスケールの浅部が 0.75/0.51 → 0.96/0.80 に上がります。 これが海底データの効果として、固着率が +0.04 動いたことよりずっと確かな指標です。 海底が増やしたのは値ではなく、分解能でした。

11. 不確かさを付ける

ここまで報告してきた固着率は全部点推定でした。この分野の人に見せたとき 最初に沈む点で、かつ直せない話ではなく、単にやっていなかっただけです。

設計を1回間違えたので記録します。最初に「観測点を復元抽出しつつ速度に 誤差を乗せる」ブートストラップを書いたら、点推定が95%区間の外に出ました (浅部 0.64 に対し区間 0.53–0.63、全行で同様)。手続きのほうが喋っているサインです。 原因は2つで、どちらも同じ向きに効きます——(1) 観測値に既に含まれるノイズの上から さらにノイズを足して二重計上していた、(2) 復元抽出は約37%の観測点を 落とすので平滑化事前分布が解をゼロ側へ引く。既知の場からデータを 生成するパラメトリック方式に変えました。

400ドロー、平滑化は1〜10の対数一様で周辺化
深さ推定95%区間バイアス
5-15 km0.640.62 – 0.67+0.01
15-25 km0.610.59 – 0.64−0.01
25-35 km0.480.43 – 0.51+0.00
35-45 km0.330.25 – 0.41+0.04
走向方向——分解能試験で確認した約200km以上のスケールに束ねて
セグメント推定95%区間
日向灘/九州沖0.380.34 – 0.42
四国沖0.680.64 – 0.71
紀伊/東海沖0.510.48 – 0.54

四国沖 − 日向灘 = 0.28(95% 0.25–0.32)、全ドローで正。 この対比は測定として立ちます。

モーメント収支のバイアスも確認しました。分解能試験で「振幅は20〜80%しか戻らない」と 分かっていたので積分量も過小かと疑いましたが、既知の場を復元させると 比 1.017(95% 0.974–1.057)=ほぼ不偏。減衰はパッチ間で固着率を 移動させるだけで、総量は壊しませんでした。

そして系統誤差が統計誤差を6倍上回る

仮定Mw
剛性率 30 GPa8.73
剛性率 40 GPa8.82
剛性率 50 GPa8.88
地震発生層 5–35 km8.78
地震発生層 5–55 km8.82

この2つを振っただけで 0.15 マグニチュード。統計誤差は 0.02。 しかも安く振れる2つだけです。固定したままなのは、スラブ形状、 均質半無限体のグリーン関数(層構造が標準で沈み込み帯では10〜30%動く。 第7節でコードは作ったのに繋いでいない)、単一剛体ブロック (公表研究は20ブロック級)、収束速度そのもの。

正直な見出しは「Mw 8.8、最後の桁は不確か」。8.81 ではないし、 ましてやこれを全部確認する前に出していた 8.87 でもありません。

12. 層構造グリーン関数を繋ぐ

不確かさの表で「均質半無限体の仮定は固着率を10〜30%動かす」と文献から引用 していた項を、自分で測った数字に置き換えます。伝播行列(第7節)は2次元平面ひずみなので、 「層構造/均質」の応答比を実形状で計算し、3次元 Okada のグリーン関数にパッチごとに掛けます。

ここでも2つ間違えたので記録します。

(1) 点ごとの比は使えません。両プロファイルはゼロを横切り、その位置が わずかにずれるので、割ると極と符号反転が出ます。初回は深さ38km・距離20kmで 比 −0.26 が出ました——物理ではなく、根をまたいだ小さい数どうしの 割り算です。最小二乗スケール因子1つに変え、形状相関も併記しました。

(2) 震源が自分のいる岩石を感じていませんでした。上部マントルでの 単位すべりはマントルの剛性率に比例したモーメントを放射します=地殻の約2倍。初版は 両方とも地殻の剛性率で計算しており、測ろうとしていた深さ依存効果そのものを 黙って捨てていました。

層構造/均質の応答スケール(地殻30km、マントルは2.06倍硬い)
震源深さスケール形状相関
8 km1.030.999
20 km1.090.995
26 km1.130.987
32 km1.280.987
44 km1.250.990

30kmで跳ぶのが地殻/マントル境界です。深部のパッチは硬い岩の中にあるので、同じすべり量でも モーメントが大きく地表をより動かします。形状相関が全て0.987以上なので、スカラー1つでの 近似は妥当と判断できます。

均質層構造変化
平均固着率0.520.50−5%
RMS残差 mm/yr5.285.20改善
モーメント収支2.57e202.47e20−4%
相当Mw8.818.80−0.01

均質弾性の仮定はマグニチュードで 0.01 相当でした。 剛性率+地震発生層の 0.15、統計誤差の 0.02 と比べると小さい。文献の「10〜30%」は 方向としては合っていましたが、このモデル・この観測点配置では 5%。 引用ではなく自分の数字になりました。残差が 5.28→5.20 mm/yr とわずかに改善したのも、 補正が実在の物理を入れている傍証です。

まだ平面ひずみです。深さ方向の感度配分は捉えますが、弧が急に曲がる 場所の走向方向の効果は捉えません。真の3次元にするには、検証済みのP-SV系にSH系を足し、 モーメントテンソルを波数方向へ回して2次元FFTする必要があります。

13. 多ブロック化——日本は1枚の剛体ではない

ここまでの固着率推定は、西南日本全部を1枚の剛体キャップに乗せていました。実際は違います。 中央構造線が右横ずれ断層として弧を縦断し、斜め沈み込みがその南の前弧を走向方向に動かし、 九州は別府-島原地溝帯で開いている。どれも固着率ではないのに、単一ブロックでは 行き場が固着率しかありません。

先に逆の心配を潰す

中央構造線は海岸から約100km内陸、つまり弾性変形の信号のど真ん中にあります。 ブロック回転を増やせば固着率を解放するどころか吸収しかねない。 ブロック運動ゼロ・既知の固着率だけからデータを作って検証しました。

ブロック構成復元モーメント / 真値
単一1.015
前弧分離1.010
前弧+九州1.010

盗んでいません。安心して実データに進めます。

比較には観測点集合の固定が必要でした。初回、前弧ブロックを足したら 残差が悪化しました(5.28→5.30)。最小二乗でパラメータを増やして悪化する のは不可能なので、比較のほうが間違っています。原因は外れ値除去が反復で走るため、構成ごとに 違うデータセットを当てはめていたこと。737局に固定して比較し直しました。

構成平均深さ 5-15 / 15-25 / 25-35 / 35-45RMSFp
単一0.520.64 / 0.61 / 0.48 / 0.335.28
前弧分離0.520.64 / 0.58 / 0.44 / 0.385.0641.96e−26
前弧+九州0.520.64 / 0.58 / 0.45 / 0.384.9631.13e−35

両方とも統計的に正当化されます(残差 5.28→4.96 mm/yr、6%改善)。 ただし固着率はほとんど動きません。平均は 0.52 のまま、浅部も 0.64 のまま。 動いたのは中間〜深部の配分だけで、モーメント収支も Mw 8.81 で不変でした。 内部変形はブロック回転が吸収しましたが、それは深さプロファイルの中間部を少し均しただけです。

副産物:中央構造線の相対運動が出ました。前弧が内帯に対して 3.0〜3.3 mm/yr、方位232〜239°(西南西)。中央構造線は東西走向なので、 南側が西南西へ動くのは右横ずれ——センスは正しい。公表値(地質・測地)は 5〜10 mm/yr なのでやや小さめですが、同じオーダーで符号も合います。

小さめに出る理由は特定できます。ブロック境界を1本の線で表し、断層自体の弾性的な 固着を入れていないので、境界近傍の観測点が両ブロックの平均を引っ張ります。 本格的なブロックモデルは境界断層にも固着深さを持たせます。

14. 次の海底観測点をどこに置くか

この企画で一番堅かった成果は全部否定的な結果でした——何が決まらないか、の 定量化です。裏返すと観測網設計という実務的な問いになります。海底GNSS-A局は1点で 数千万円かかる。どの海域に置けば分解能が一番上がるか。

評価は「その地点を足すとデータによく合うか」ではありません——まだ取っていないデータには どんな地点でも合います。使うのは分解能行列 R = (GᵀWG + λ²LᵀL)⁻¹GᵀWG で、その跡(trace)が 「データが実際に決めているパラメータ数」です。これは幾何だけで決まるので、 何も建てる前に計算できます。候補1点あたり行列演算1回なので数百点を数秒で掃けます。

現状の観測網が決めているもの

沈み込み帯観測点実効的に決まっているパラメータうち浅部(5-25km)
南海トラフ陸768 + 海底1923.9 / 59(41%)16.1 / 31(52%)
日本海溝陸188 + 海底69.4 / 49(19%)4.4 / 25(18%)

日本海溝は南海の半分以下しか決まっていません。陸上局が少ないのではなく (188局ある)、海底が6点しかないからです。

南海トラフ

131E132E133E134E135E136E137E138E31N32N33N34N30.8N 131.5E gain 0.2530.8N 131.8E gain 0.5130.8N 132.1E gain 0.5430.8N 132.4E gain 0.6530.8N 132.7E gain 0.6431.1N 131.5E gain 0.2031.1N 131.8E gain 0.3431.1N 132.1E gain 0.5231.1N 132.4E gain 0.5531.1N 132.7E gain 0.6331.1N 133.0E gain 0.6331.4N 131.5E gain 0.1131.4N 131.8E gain 0.2131.4N 132.1E gain 0.4631.4N 132.4E gain 0.5431.4N 132.7E gain 0.5931.4N 133.0E gain 0.5131.4N 133.3E gain 0.3631.7N 131.8E gain 0.1731.7N 132.1E gain 0.2431.7N 132.4E gain 0.4131.7N 132.7E gain 0.2331.7N 133.0E gain 0.3231.7N 133.3E gain 0.3131.7N 133.6E gain 0.0932.0N 131.8E gain 0.0632.0N 132.1E gain 0.0732.0N 132.4E gain 0.0732.0N 132.7E gain 0.1132.0N 133.0E gain 0.1532.0N 133.3E gain 0.0532.0N 133.6E gain 0.0632.0N 133.9E gain 0.0632.0N 134.2E gain 0.1132.3N 132.1E gain 0.0632.3N 132.4E gain 0.0432.3N 132.7E gain 0.0632.3N 133.0E gain 0.0532.3N 133.3E gain 0.0432.3N 133.6E gain 0.0532.3N 133.9E gain 0.1132.3N 134.2E gain 0.0832.3N 134.5E gain 0.3732.3N 134.8E gain 0.2632.6N 132.1E gain 0.0232.6N 132.4E gain 0.0432.6N 132.7E gain 0.0432.6N 133.0E gain 0.0532.6N 133.3E gain 0.0632.6N 133.6E gain 0.0632.6N 133.9E gain 0.0532.6N 134.2E gain 0.3332.6N 134.5E gain 0.4132.6N 134.8E gain 0.1832.6N 135.1E gain 0.1032.6N 135.4E gain 0.0532.6N 135.7E gain 0.0632.9N 133.3E gain 0.0332.9N 133.6E gain 0.0532.9N 133.9E gain 0.1932.9N 134.2E gain 0.3232.9N 134.5E gain 0.2232.9N 134.8E gain 0.0932.9N 135.1E gain 0.0532.9N 135.4E gain 0.0632.9N 135.7E gain 0.0432.9N 136.0E gain 0.0632.9N 136.3E gain 0.0732.9N 136.6E gain 0.0133.2N 133.6E gain 0.0233.2N 133.9E gain 0.1033.2N 134.5E gain 0.0433.2N 134.8E gain 0.0533.2N 135.1E gain 0.0233.2N 135.4E gain 0.0533.2N 135.7E gain 0.0233.2N 136.0E gain 0.0633.2N 136.3E gain 0.0333.2N 136.6E gain 0.0433.2N 136.9E gain 0.0533.2N 137.2E gain 0.0133.5N 134.8E gain 0.0433.5N 135.1E gain 0.0433.5N 136.3E gain 0.0233.5N 136.6E gain 0.0433.5N 136.9E gain 0.0333.5N 137.2E gain 0.1233.5N 137.5E gain 0.2033.8N 134.8E gain 0.0233.8N 136.6E gain 0.0533.8N 136.9E gain 0.0833.8N 137.2E gain 0.1333.8N 137.5E gain 0.1533.8N 137.8E gain 0.0333.8N 138.1E gain 0.0234.1N 136.6E gain 0.0334.1N 136.9E gain 0.0534.1N 137.2E gain 0.0634.1N 137.5E gain 0.0434.1N 137.8E gain 0.0634.1N 138.1E gain 0.08ASZ1ASZ2HYG1HYG2KUM1KUM2KUM3KUM4MRT1MRT2MRT3SIO2SIOWTOK1TOK2TOK3TOS1TOS2ZENW123
濃いほど分解能改善量が大きい 既存の海底局 推奨(1〜3番目)

最良は 30.8N 132.4E 付近——日向灘の既存局(HYG1/HYG2)より さらに南。走向方向の分解能を見ると、ここが 0.174 と全体で最悪の区域でした。 モデル領域の端を埋めているだけではないかを確認しましたが、端(0.379)と内部(0.408)は ほぼ同じで、人工物ではありません。

日本海溝

141E142E143E144E36N37N38N39N40N41N36.2N 141.3E gain 0.3336.2N 141.6E gain 0.5036.2N 141.9E gain 0.4636.2N 142.2E gain 0.8436.2N 142.5E gain 0.7236.2N 142.8E gain 0.6836.5N 141.3E gain 0.1836.5N 141.6E gain 0.4136.5N 141.9E gain 0.4936.5N 142.2E gain 0.6536.5N 142.5E gain 0.6536.5N 142.8E gain 0.7236.8N 141.6E gain 0.1736.8N 141.9E gain 0.3636.8N 142.2E gain 0.3936.8N 142.5E gain 0.4936.8N 142.8E gain 0.4736.8N 143.1E gain 0.6637.1N 141.6E gain 0.0337.1N 141.9E gain 0.1137.1N 142.2E gain 0.2137.1N 142.5E gain 0.3037.1N 142.8E gain 0.4337.1N 143.1E gain 0.5737.1N 143.4E gain 0.6237.4N 141.9E gain 0.0337.4N 142.2E gain 0.1837.4N 142.5E gain 0.3137.4N 142.8E gain 0.5737.4N 143.1E gain 0.5937.4N 143.4E gain 0.6337.7N 141.9E gain 0.0437.7N 142.2E gain 0.1737.7N 142.5E gain 0.3337.7N 142.8E gain 0.4437.7N 143.1E gain 0.5937.7N 143.4E gain 0.6537.7N 143.7E gain 0.6438.0N 142.2E gain 0.0738.0N 142.5E gain 0.1438.0N 142.8E gain 0.1038.0N 143.1E gain 0.2538.0N 143.4E gain 0.3838.0N 143.7E gain 0.5238.3N 142.2E gain 0.0338.3N 142.5E gain 0.0738.3N 142.8E gain 0.0638.3N 143.1E gain 0.2038.3N 143.4E gain 0.3338.3N 143.7E gain 0.3738.3N 144.0E gain 0.4738.6N 142.2E gain 0.0438.6N 142.5E gain 0.0938.6N 142.8E gain 0.1338.6N 143.1E gain 0.1138.6N 143.4E gain 0.1338.6N 143.7E gain 0.3338.6N 144.0E gain 0.4938.9N 142.2E gain 0.0438.9N 142.5E gain 0.1038.9N 142.8E gain 0.1538.9N 143.1E gain 0.0838.9N 143.4E gain 0.1638.9N 143.7E gain 0.3038.9N 144.0E gain 0.4339.2N 142.5E gain 0.1139.2N 142.8E gain 0.2039.2N 143.1E gain 0.1539.2N 143.4E gain 0.2439.2N 143.7E gain 0.4839.2N 144.0E gain 0.5839.5N 142.5E gain 0.1739.5N 142.8E gain 0.3839.5N 143.1E gain 0.4739.5N 143.4E gain 0.7139.5N 143.7E gain 0.7939.5N 144.0E gain 0.8239.8N 142.5E gain 0.2139.8N 142.8E gain 0.4739.8N 143.1E gain 0.6139.8N 143.4E gain 0.7639.8N 143.7E gain 0.8739.8N 144.0E gain 0.8840.1N 142.5E gain 0.2140.1N 142.8E gain 0.4640.1N 143.1E gain 0.6840.1N 143.4E gain 0.7240.1N 143.7E gain 0.7540.1N 144.0E gain 0.8940.4N 142.8E gain 0.3940.4N 143.1E gain 0.6540.4N 143.4E gain 0.7140.4N 143.7E gain 0.8840.4N 144.0E gain 0.8240.4N 144.3E gain 0.8040.7N 142.8E gain 0.3040.7N 143.1E gain 0.5440.7N 143.4E gain 0.6540.7N 143.7E gain 0.6740.7N 144.0E gain 0.8040.7N 144.3E gain 0.9641.0N 143.1E gain 0.4841.0N 143.4E gain 0.7541.0N 143.7E gain 0.8041.0N 144.0E gain 0.7841.0N 144.3E gain 0.91CHOSFUKUKAMNKAMSMYGIMYGW123

最良は 40.7N 144.3E ——三陸沖北部。既存6点は 38.1〜38.9N に固まっており、 39N 以北に1点もありません。分解能も北側(走向ビン8-12)で 0.05〜0.13 と 崩壊しています。2011年の破壊域の北端であり、択捉沖・十勝沖へ続く区間です。

海底1点は陸上10点の何倍か

沈み込み帯新設沿岸陸上10局最良地点に海底1点倍率
南海トラフ0.0280.64723倍
日本海溝0.0080.956116倍

浅部分解能の改善量で比較。陸上局の追加がほぼ無意味なのは、既に十分密で、 どれも同じものを見ているからです。海に出ないと新しい情報が入りません。 日本海溝で倍率が極端に大きいのは、単に海底局が足りていないからです。

逓減は速い。貪欲法で順に足すと、南海は 1点目 +0.67 → 6点目 +0.20、 日本海溝は 1点目 +1.08 → 6点目 +0.73。日本海溝は6点足してもまだ逓減していません ——飽和にほど遠いということです。南海は数点で頭打ちに近づきます。

注意点。σは分散成分推定後の値(陸3.5 / 海底2.3 mm/yr)を使っています。海底のほうが 良いのは誤差が小さいからではなく、陸上には本モデルが記述しない変形が大量に 含まれるからです。また海底σは約10年の繰り返し観測を前提とした値で、 新設局が初日からその精度を出すわけではありません。

15. 世界の沈み込み帯を同じ物差しで

同じ計算を9つの沈み込み帯に広げました。パイプラインは元から全球対応です——MORVEL は 任意のプレート対、Slab2 は全沈み込み帯、MIDAS は全球。同じ正則化・同じ指標 で通すと、初めて帯どうしを比べられます。

浅部(5-25km)の実効分解能。海底局を持つのは日本の2帯だけ
沈み込み帯陸上局海底局 浅部分解能最寄10局下のスラブ深度海底1点/陸上10点
Nankai Trough7681952%6 km23倍
Hikurangi (NZ)158032%15 km4倍
Cascadia667021%15 km6倍
Sumatra57019%17 km6倍
Japan Trench188618%33 km116倍
Alaska-Aleutian120017%18 km4倍
Mexico (Guerrero)91016%18 km4倍
South Chile99015%30 km12倍
North Chile112015%30 km5倍

一番きれいな比較は南海 vs カスカディアです。 陸上局は 768 と 667 でほぼ同じ。それなのに浅部分解能は 52% と 21%。 差は海底19点だけです。

相関を取ると、陸上局数 +0.70、海底局数 +0.84最寄局下のスラブ深度 −0.72(浅い=海溝に近いほど良い)。 陸上局を数えてもほとんど何も分かりません。器械が海溝にどれだけ近づいているかが ほぼ全てです。

これは資金の話であると同時に地理の話でもあります。日本が界面の上に器械を 置けるのは、南海トラフが沖合100kmで、かつ国が豊かだから。チリの海溝も同程度の距離ですが 海底局はゼロ。アリューシャンはそもそも立つ陸がほとんどありません。

そして公開の海底測地アレイを持つのは世界で日本だけです(海上保安庁 SGO-A)。 この表で日本の2帯が特異に見えるのは、観測の問題であって地球の問題ではありません。

逆に言えば、日本海溝は日本国内で最も遅れています。陸上188局・海底6点で 浅部18%——カスカディアやアラスカと同水準です。海底6点が 38.1〜38.9N に固まっており、 39N以北が空白。だから「海底1点=陸上10点の116倍」という極端な数字が出ます。 そこに何も無いからです。

16. 既存の観測点は1つずつ何を支えているか

設置の逆を聞きます。1局ずつ抜いて、固着率モデルが何を失うかを測る。 同じ分解能行列で、足す代わりに引くだけです。

先に読み方の枠を。GEONETは多くの仕事をしています——国土測量、火山監視、 内陸活断層、機械制御や災害対応のリアルタイム測位。ここで測るのはそのうち1つ、 沈み込み界面をどれだけ拘束するかだけです。ここでゼロの局が他の用途で不可欠な ことは普通にあります。何かを止めろという話ではありません。

逆向きの問いには使えます——いま白紙からこの目的だけのために設計したら、 どれだけ作るか。

1局抜いたときの損失

沈み込み帯陸上(中央値)海底(中央値)
南海トラフ0.000220.08661388倍
日本海溝0.000070.089081272倍

最も価値の高い局は、両帯とも全部が海底だった

日本海溝:上位8局
順位種別損失
1KAMN海底0.6897
2FUKU海底0.5667
3KAMS海底0.5651
4MYGI海底0.3379
5MYGW海底0.0981
6CHOS海底0.0179
7I009陸上0.0107
8KSMV陸上0.0106

南海も上位10局がすべて海底でした(MRT2, HYG2, TOS2, ASZ2, TOK1, ...)。 陸上局が最初に現れるのは11位以下です。

剪定曲線——何局まで減らせるか

50%75%90%100%30100300700残した観測点数(対数)

南海トラフ(787局から)。95%を保つのに 141局、90%で84局、75%で27局。

50%75%90%100%30100残した観測点数(対数)

日本海溝(194局から)。95%を保つのにわずか18局、90%なら12局。 最後まで残る12局は海底6点すべて+陸上6局

一局ずつの評価と、まとめて減らせる数は違います。南海の陸上局の35%は 「単独で抜いても損失0.0001未満」ですが、それはフルの観測網に対して 測った値で、隣の局が肩代わりしているからです。全部は抜けません。だから貪欲剪定 (抜くたびに再評価する)が必要でした。

正しい読み方。密な陸上網は無駄ではありません——他の仕事をしているし、 各局が単独では安く見えるその冗長性こそが、故障に耐える理由です。数字が言っているのは もっと狭く、もっと使えることです:沈み込み界面の拘束に関する限り、陸上局は 早々に飽和し、飽和したあとに分解能を買う唯一の方法は沖に出ることだと。 日本は既にそれを見つけていました——世界で唯一の公開海底測地アレイを作ったのだから。 ここの計算は、それが正解だった理由に数字を付けただけです。

17. 到達点

できること

  • 地球上の任意の地点のプレート速度を約 1 mm/yr の精度で計算する
  • 境界でそれを収束成分と横ずれ成分に分解する
  • 収束速度をモーメント収支に変換し、たまった量を積算する
  • GNSS実測から固着率そのものを推定する(南海トラフ、日本海溝=震災前データ)
  • 余震の発生率を、実証済みの精度で予測する
  • 更新過程モデルで長期確率を再現する
  • 層構造弾性+粘弾性の伝播行列を解く(均質極限で Okada と4桁一致)
  • 海底GNSS-Aを取り込み、浅部(沖側)の固着率を陸上外挿から実測に置き換える
  • 余効変動を粘弾性緩和と余効すべりに分離する(海底の符号反転を使う)

できないこと

  • いつ起きるかを言うこと。この計算のどこからも日付は出ません
  • 前兆から予知すること。ラドン・電磁波・宏観異常・地震雲—— 事前検証を通ったものは一つもありません
  • 30年確率を「カウントダウン」として読むこと。確率は日付ではない
  • モーメント収支が満杯だから危ない、と言うこと。 東北2011は当時の収支をはるかに超えて解放しました

決定論的な地震予知に実証された成功例がない、というのは悲観ではなく 国際的な合意です(Geller et al. 1997, Nature/ラクイラ地震後の ICEF 2011 報告)。 できるのは確率の更新であって、予知ではありません。

公開についての注意:日本では地震の「予報」を業として公衆に提供するには 気象業務法上の許可が要ります。気象庁の発表をそのまま伝えるのは伝達行為で問題ありませんが、 自前の予測を発表するのは別です。手元の研究用にとどめるか、公開するなら 事後分析として枠組みを明示するのが安全です。

データ出典とライセンス

本ページの数値はすべて公開データから再現できます。各出典の条件を以下に示します。

海底地殻変動観測(GNSS-A、SGO-A 27点)
海上保安庁 海洋情報部。CC BY-NC 4.0(非商用)。 引用: Yokota, Y., Ishikawa, T. & Watanabe, S. (2018) Sci. Data 5, 180182. doi:10.1038/sdata.2018.182
https://www1.kaiho.mlit.go.jp/chikaku/kaitei/sgs/
プレート角速度(NNR-MORVEL56、56プレート)
Argus, D.F., Gordon, R.G. & DeMets, C. (2011) Geochem. Geophys. Geosyst. 12, Q11001。 境界は Bird, P. (2003) PB2002 を56プレートに再編したもの。
沈み込み面形状(Slab2)
Hayes, G.P. et al. (2018) Science 362, 58–61。米国地質調査所(USGS)。
陸上GNSS速度場・日次時系列(MIDAS / tenv3)
Blewitt, G., Kreemer, C., Hammond, W.C. & Gazeaux, J. (2016) J. Geophys. Res. 121, 2054–2068。Nevada Geodetic Laboratory。 日本の局は国土地理院 GEONET に由来します。
地震カタログ
USGS FDSN event service。
長期確率の比較対象
地震調査研究推進本部の公表値。本ページの BPT による76%は、 その「30年以内70〜80%」を手法検証のために再現したものであり、 独立した推定ではありません。

手法

弾性転位 Okada (1985)。バックスリップ分解 Savage (1983)。層構造静弾性 Singh (1970)。 逆ラプラス変換 Stehfest (1970)。軌道モデル Bevis & Brown (2014)。 余震減衰は改良大森公式(宇津 1961)、b値は Aki (1965) の最尤推定、 余震予測は Reasenberg & Jones (1989) 型。粘弾性緩和の符号反転については Sun, T. et al. (2014) Nature 514, 84–87。

本ページの位置づけ

非商用の研究記録です。商品・サービスの宣伝を目的とせず、 広告・販売・営業目的の問い合わせ導線を置いていません。 使用データのうち海底地殻変動観測データは非商用ライセンス(CC BY-NC 4.0)であり、 本ページはその条件下での利用です。

また、日本では地震の「予報」を業として公衆に提供するには気象業務法上の許可が要ります。 本ページは事後分析と手法検証の記録であり、将来の地震の予測を 提供するものではありません。防災情報は気象庁の発表に従ってください。

誤りの指摘、とくに観測網密度と分解能の一般則についての先行研究を ご存じの方は boss@allfesta.com までお知らせください。